弁護士費用特約

2015-08-10

1 自動車保険などに「弁護士費用特約」を付けている方も少なくないと思います。「弁護士費用特約」とは,被保険者が偶然な事故による被害について弁護士に法律相談した場合の法律相談費用や損害賠償請求事件の解決を依頼した場合の弁護士費用,訴訟費用等について保険金が支払われる特約です。日本弁護士連合会(日弁連)は,弁護士へのアクセス拡充のため,平成12年,損保各社と協力して「日弁連リーガル・アクセス・センター」(LAC)を設置し,「弁護士費用特約」の普及に努めています。
2 もっとも,「弁護士費用特約」の商品名や細かな補償内容は損保各社によって異なっています。例えば,通勤のため自宅から最寄駅まで歩行中に車にはねられて大ケガをしたAさんは,自分(記名被保険者)が契約していたM社の『自動車事故弁護士費用特約』約款(M社約款)では,「労働災害により生じた身体の障害によって生じた損害」につきM社免責と定めていたため,使うことを断念しました。同じケースであっても,業界最大手(T社)の『弁護士費用等補償特約(自動車)』やインターネット損保(MD社)の『自動車事故弁護士費用等補償特約』の約款によれば,保険会社免責とはされておらず保険金が出ます。
3 確かに,交通事故の被害者が,①被保険者の業務に従事中に使用人(従業員災害),②被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人(同僚災害)の場合は,いずれも労災保険の適用場面であって,保険会社免責というのが損害保険の基本的な考え方であり,MD社の上記約款は正に同旨を定めています。しかし,それ以上に「労災全般」を免責事由とするM社約款は,損害保険の基本原理を逸脱し,他社の「弁護士費用特約」約款に比べて被保険者に一方的に不利であり,M社の特約保険料が他社と同水準に設定されているとすれば,M社約款に合理的根拠を見出すことは困難です。しかも,M社の『自動車事故弁護士費用特約』のパンフレットに上記免責事由の記載はなく,販売時にきちんと説明がなされているとも思われません(実際,Aさんは知りませんでした)。
4 消費者契約法は,信義則に反して消費者の利益を一方的に害する契約条項を無効とし(10条),適格消費者団体(2条4号)に差止請求権が付与されています(12条3項,4項)。また,現行民法には約款に関する規定はありませんが,現在国会で審議中の民法改正案には,「約款の条項のうち,取引の実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは,契約内容に含まれない」旨の規定(548条の2第2項)が盛り込まれており,消費者以外の契約当事者にも適用されることになります。M社約款が変更を余儀なくされるのは社会の趨勢であり,もはや時間の問題と思われます。

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